山葡萄

私が住んでいる辺りでは、例年、秋の9月下旬から10月上旬にかけて、山葡萄が熟し始めます。
山葡萄狩りは、アケビやきのこと並ぶ、秋の山歩きの醍醐味といえるでしょう。
また、時期を同じくして、稲刈りシーズンも到来し、此処かしこ至る所で稲の刈り取り風景が繰り広げられます。

私の家は農家で「あきたこまち」を約1.5ヘクタール作付けしており、稲刈りともなると勤め先から「秋の農作業休み」をもらい、家族総出の上、朝から晩まで2〜3日かけ、短期決戦で秋の収穫を行ないます。

秋は天候の変化が激しいので、稲刈りの日程は、天気予報とにらめっこしながら、決めなければなりません。
稲穂に水滴がついた状態で、稲刈りを行なうと、米の品質が落ちるので、雨が降ったら稲刈りはできません。
また、朝露が乾いた後でなければ刈り取りはNGです。
私の家では、私の父親が知り合いから格安の値段で買い取り、修理しながら騙し騙し使っている、年代物のコンバインで、秋の稲刈りを行ないます。

刈り取られた稲は袋に詰められ、一旦コンバインの脇に横積みされますが、積みきれなくなると、今度は田の畦に降ろされて、積まれることになります。
これを軽トラに積んで家まで運んで、乾燥機に張り込み、二日くらい乾燥させて、脱穀の上、袋に詰めて出荷します。
こんな大事な秋の収穫時期ではありますが、この時期になると、何もかにも放り投げて、山に繰り出したい気持ちに駆られます。
まるで、試験勉強に追われているにもかかわらず好きな遊びに没頭する小学生みたいなものです。
それはなぜか、山葡萄など、自分の山の畑が荒らされはしないかと心配で、気が気でならないのであります。

たまに、誰にも場所を教えてはいないのに秘密のありかが荒されている光景に、遭遇することがあります。
私は、現在の自分の畑は2、3年もしたら、人に知られてしまうと割り切って、新規開拓を図るようにしています。
人に先を越されると、思わず「こんにゃろ〜め」と唸ってしまいますが、私に先を越された方もいるわけで、お互い様です。
このページでは、秋の代表的な山菜〜山葡萄とアケビ〜にまつわる、私の山歩きのエピソードと、山菜の保存・料理方法などをご紹介します。

山葡萄狩り
3年前、山から山葡萄の根を失敬して、裏庭に植えましたが今年になって枝が急速に伸び始め、結実しました。
但し、人工授粉させてないため身の入りはよくありません。
今年からは、我が家の山葡萄の実が、色づいた頃を見計らって、山の畑の山葡萄狩りに繰り出せると内心ほくそ笑んでいます。
山葡萄に含まれる鉄分、ポリフェノールは、普通の葡萄のそれぞれ6倍、9倍といわれており、山葡萄は健康食品として、大変注目を浴びています。

私の家内と長男が貧血だったことが、山葡萄狩りにこり始めたきっかけであったような気がします。
山葡萄狩りに出かける時は、1日仕事になるので大きなおにぎりと漬物、そして水を入れて、冷凍庫でガチンガチンに冷やした、ペットボトルを必ず携行します。
道具は、伸縮自在の枝切バサミ、そしてアルミ梯子で、身体は帽子、長靴、軍手で完全武装して出かけます。
収穫した山葡萄を入れる段ボール箱と新聞紙なども用意します。

さて、山葡萄の採取に要する労力は、ぶどう蔦の伸び方によってさまざまです。
座って手が届くところに、山葡萄がぶら下がっている場合もありますし、ハサミと梯子を使っても届かず、ハサミを担いで、ぶどう蔓が絡み付く木に、よじ登る場合だってあります。
ただし、無理をしてはいけません、ある程度の危険を冒してまで採ろうとする場合でも、例えば、自分がいる枝が折れても、横の枝に移れば丈夫だとか危険を担保できる状況が、具体的に頭の中で組み立てられる場合のみに限定されます。
「この枝が折れたら、真っ逆さまに地べたに衝突するしかない」という状況下では、きれいサッパリ山葡萄は諦めます。
たった一人、山の中で身動きが取れなくなったらたいへんです。
捜索隊に救助されることにでもなったら、表が歩きづらくなりますので無理はやめましょう。
山葡萄の房が、目の前に鈴なりになっている場合には、先ず、深呼吸して気持の高鳴りを抑え、スズメバチ、ヘビ、毒虫が周りにいないか、よく見回して確認した後に、丁寧に収穫していきます。
目の前に鈴なりになっている状態とはこんな感じです。

夢中になって採っている時に、ふと横を見たら山葡萄ではなくヘビがいた、ハチがいた、とはよく聞く話で、私も何度も痛い目に遭いました。
驚きの余り声を上げたり、後ろにのけぞったり、このような人間側の不自然(彼の内面では至極あたりまえなのですが)な行動が咬まれたり、刺されたりする羽目になります。
高いところにある山葡萄は、伸縮自在の枝切バサミのお世話になります。
これは最長1.8mまで伸びるので、私の場合は地面から3.5m上方にある山葡萄の房まで対応可能です。

また、山葡萄の房を蔓から切り離す機能と、房をグリップする機能が同時に働くので、山葡萄の房は下に落下しません。
ですから、房がバラバラ事件になることがなく実に傷がつきません。
大変重宝しています、これなしでは私の山葡萄狩りは考えられません。
さて、太陽が頭の上に来たら昼飯です。
握り飯と水しかありませんが、これ以上望むものは何もありません。
ただの米の塊と水が、こんなにうまいものだったかと妙に感心させられます。
食べ終わったら、30分ばかり寝転んでしばし休憩です。
ただし、草むらに横になるのはやめて、車内で休みましょう。
やぶ蚊に刺されます、自然志向もほどほどが大切です。
午後も張り切って、山葡萄を探しに野を駆けずり回ります。
いやぁ〜今日も大漁、そろそろ家に帰って収穫した山葡萄の後始末をしましょう。

ということで、山葡萄の保存方法のご紹介です。
我が家では、採った山葡萄は全てジュースとして保存され、ほとんどカミサンにより消費されます。
・山葡萄の果実を洗ってよく水を切る。
・容器(鉄製は不可)に果実を入れて、果実の3割程度のザラメを加えて混ぜ合わせる。
・容器にふたをして3〜4日おく。
・木綿袋などに入れて搾汁する。
・こしとったジュースは冷蔵庫で保存するのが無難です。
山葡萄は、疲れ目改善、活性酸素抑制、血液浄化作用、抗酸化作用、がん予防、抗菌作用など幅広い効用が認められています。

最近聞きかじったんですが、山葡萄の種類は20くらいあるそうです。
そういえば、果実の大きさ、一房当りの果実数、果実の糖度には、確かに大なり小なり違いがあるようです。
私は、自宅で栽培している山葡萄で、色々な交配実験をしてみようと計画しています。
実験結果が出たら、アップさせていただきますのでお楽しみに。

最後に、蔓がむしりとられていたり、巻きついている木が切り倒されていたりと、ここ最近富みに、山葡萄の悲惨な光景に、遭遇する機会が増えたような気がします。
蔓があれば、実は何ぼでも生まれてきます、でも蔓がなかったらどうなるん・・・こんな簡単なこと解らない人はいないはずなんですが。
アケビ
山菜という観点では、紫に色づいたアケビが最良のものかと思われます。

パックり口の開いた、紫アケビの白い実を頬張るとトローりクリーミーな味がします。
私が子供の頃は、おやつ代わりに、ねぎに味噌をつけて食わされていたほど、貧乏な生活をしていましたので、ただで手に入るアケビは、すごいご馳走でした。
私の家ばかりではなく、この辺りの農家は一様に貧乏で、質素な暮らしを余儀なくされていたように思います。
アケビの中でも、紫アケビと呼ばれる、紫色したものがもてはやされました。
アケビを採って見せびらかしても(それだけ子供たちの間ではアケビは貴重品でした)、白いアケビであれば「紫でねしゃ、そんたもんまぐねべ」といわれる始末。

早取りして家で追熟させることも流行りました。
生糖(こぬか)に埋めて置くと追熟が進みます。
なぜそんな面倒なことをするかといえば、アケビに目星をつけて、紫になるまで待っていても、横取りされることがあるからです。
横取りといっても、持ち去った相手には、誰かが目をつけているだろうとの認識がないので、罪の意識は働かず、決して横取りとはいえないのですが、狙いをつけてひたすら待ち続けた挙句、いい頃合に忽然と消えてしまう憂き目を、味合わされた側の心境は、まさしく「横取りされた」になります。

大人になって、酒をたしなむようになると、中の白い実より皮に食指が動かされます。
皮を湯がき、中にしその実やミョウガを混ぜ込んだ米を詰め込みます。
これに、醤油をタチッ、タチッ(あくまで2滴にこだわりがあります、万遍なくかけると、アケビのほろ苦さが消えてしまいます)と加えて、日本酒とやってみてください。
奥様に叱られても責任は持てませんが、酒がすすみます。
このような利用の仕方も、皮が柔らかい紫アケビのほうが、美味しいような気がします。
また、湯がいた皮に甘味噌をつけてレンジでチンしても、油炒めにしても美味しくいただけますよ。
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