子供と昆虫

私には息子と娘の二人の子供がいます。
現在、息子は神奈川で社会人、娘は東京で学生をしております。
子供たちが小学・中学生の頃は、夏休みになると、よくセミ、トンボ、カブトムシなどの昆虫を捕まえに連れ出したものです。
私も小さい頃には、昆虫に大変興味があり、昆虫標本に使う注射器や防腐剤が入った、昆虫採取セットなるものを、親にねだって買ってもらった記憶があります。
昔も今も小さい子供は、昆虫採取が大好きですよね。

昆虫を捕まえて観察することに留まらず、更に一歩踏み込んで、子供に生命の尊厳や自然の雄大さを理解させるには、昆虫の脱皮や羽化などの神秘的な瞬間を見せてあげることが効果的だと思います。
このページでは、その手軽な一例として、アブラゼミの羽化観察についてご紹介いたします。
昆虫好きの小さな子供さんがおいでの親御さんのご参考になれば幸いです。
アブラゼミは、羽化する時期や時間がおおよそ決まっているので、羽化のようすを観察しやすい昆虫です。
地面にあいた穴から出てくる幼虫を観察すればいいので、トンボなどの昆虫のように「どのヤゴがトンボになるのかなあ」って悩む必要もないんです。

うまく観察できたら,子供さんの夏休み自由研究が1日で完成するかも。
東北以南ではもっと早いでしょうが、この辺では、7月後半から8月初旬にかけて、アブラゼミが鳴き始めます。
殆どの学校の夏休みは、7月20日前後から始まると思いますので、ぜひ夏休みを利用して子供さんと一緒にアブラゼミの生態を観察してみましょう。
まず、一番肝心なことは、アブラゼミがどこで羽化をするのか突き止めることです。
幼虫の抜け殻をたくさん見つけることができればその周辺でアブラゼミの羽化がほぼ確実に観察できます。
アブラゼミの幼虫は、日が沈むころ穴から出てきますので、日中のうちに幼虫が顔を出しそうな穴の検討をつけておきます。
アブラゼミの幼虫がどの穴から這い出してくるか子供さんと賭けをしても面白いですね。

夕方になったら、懐中電灯と虫除けを携帯して、目的の場所に繰り出しましょう。
昼に目星をつけた穴の周辺から、一匹また一匹とアブラゼミの幼虫が出てきます。
草木に登り始めたアブラゼミの幼虫は、途中で動かなくなり、暫くすると背中がぱっくり割れて、茶色の殻の色とは程遠い、うす緑がかった白い剥き身が姿を現します。
背中が割れて、殻から完全に抜け出すまでは40分くらいかかります。
この途中で、アブラゼミは頭を下にして、落っこちそうになり、子供さんが心配して手を添えようとするかもしれません。
「落ちないから大丈夫」と声をかけてあげてください。
さあ、一番の見所はこの後です。

アブラゼミは、抜け出した殻にしがみついて羽を伸ばし始めますが、羽は10分くらいで見る見るうちに伸びていきます。
横にいる子供さんの顔を見てください。
きっと、固唾を飲んでアブラゼミの変体の一部始終を見つめていることでしょう羽化したばかりのアブラゼミの羽は、真っ白で縁には緑色の筋がついています。
これが本来の茶色に変わるまであと3時間くらいはかかります。

次の日になれば必ず「また連れてって」とせがまれます。
その場合は、また一緒に夕方出かけて、アブラゼミの幼虫が這い出してきたところを、そっと捕まえ家までご招待しましょう。
レースのカーテンなどに掴まらせてあげると、野外で観察したアブラゼミの神秘体験の一部始終がご自宅でご覧いただけます。
子供さんにはこう教えてあげましょう。
「アブラゼミの幼虫は土の下で6年間じっと我慢して、やっとこさ地上に出てきたところなんだよ。
でもね、もう20日もしたら死んじゃうんだ。
だから明日になったら放してあげようね。
」昆虫の神秘に触れ、慈悲心にあふれ自他享楽が理解できる子供さんにきっと成長されますよ。
おまけ 我が家の鯉の孵化
昆虫に限らず、魚にも小さい子供は興味を持つようです。
我が家には池があり、鯉や息子が川で釣ってきた川魚を放しています。
その年の気象状況にもよりますが、我が家の鯉の産卵時期は凡そ5月下旬ころ。
自前の山林から間伐した杉の枝を池の四隅に沈めておくと、杉の葉や枝の部分に、白い小さな鯉の卵がビッシリと産み付けられます。
この杉の枝を、いくつかに切り分けて田んぼの水につけておくと、一週間くらいで鯉が孵化します。
鯉の孵化する様子を、子供たちは毎日のように眺めていました。
孵化したての鯉は、ほんの数ミリの大きさですが杉の枝の周辺にウヨウヨと漂っています。
そのうち稲が生長して鯉の姿が見えなくなるので家庭菜園の一部を掘って作った池に100〜150匹くらい移し替えます。
田んぼに放した鯉に比べ、どうしても成長が遅れますが、子供たちは毎日鯉の成長を見届けることができます。
子供たちがあんまり餌をやりすぎて、鯉が死に絶えたこともありましたし、せっかく大きくなってもサギにもって行かれた年もありました。
しかし、親が口をはさまなくても、子供は失敗を繰り返さない術を学んでいきます。
どこで情報を仕入れてきたのか、子供たちが池の上にテグスのくもの糸を張り巡らしているのを見て、驚いたこともあります。
田んぼに放した鯉は、稲を刈る前に親鯉がいる池に移し替えます。
田んぼの取水口をせき止めて、水を抜き始めるとあちこちで「バチャバチャ」子鯉が跳ねる音が聞こえてきます。
待ってましたとばかり、網を片手に二人で競争して、鯉を追い掛け回します。
私は、土手から高みの見物、これから先二度とお目に掛かれないであろう「永遠の真昼」を毎年瞼に歌ためてきました。
泥まみれで鯉を探す子供たちの回りでは、山吹色に色づいた稲穂が揺れ、アキアカネがスイスイ飛び交っています。

今年もたくさん孵化した子鯉を親元に帰す事ができました。
でも、田んぼではしゃぐ子供たちの姿が見れなくてちょっぴり残念です。