タバコと日本のページでは、タバコの日本史デビューから江戸時代までのタバコを取り巻く世相をご紹介しています。タバコの日本史デビューは鉄砲伝来の年1542年といわれておりますが、タバコが日本史に始めて登場した時の西洋人の喫煙行為を見た日本人の驚きなどをご紹介しています。

タバコと日本 鉄砲伝来とタバコ禁止令

高校の頃、種子島にポルトガルから鉄砲が伝来したのは1542年と日本史の先生は教えてくれました。

でも、「日本人が初めてヨーロッパのタバコに遭遇したのも、この鉄砲伝来の年なんだよ」とは、流石に教えてくれませんでしたね。

これも、日本史の教科書には載ってはいませんが、西洋人がタバコの煙を吸って、吐き出す光景に驚いた日本人は「南蛮人は腹の中で火を焚いている」と驚いたそうです。

こんなこと日本史の教科書に載せられるわけありませんよね。

竜胆子供に真似されたら大変です。

西洋人からタバコのハウツーを仕込まれた日本人はタバコを貰って噴かしているだけでしたら、無くなったらそれでおしまいだったんですが、幸か不幸かそれから半世紀ほどたった1601年に、フランシスコ系のキリスト教伝道師が、徳川家康にタバコの種子をプレゼントしたと史に記載がみえます。

タバコは医療品という話を聞きつけた家康は、根っからの薬好きだったので、タバコの栽培を奨励したそうです。

 そしたら、タバコの栽培は瞬く間に、日本各地に広まり、元和年間(1615〜1624年)には、趣味栽培の枠を超えて、生産物取引を目的とした栽培が行われるまでになったということです。

桜と衝立 ちなみに、元和の前の慶長年間(1596〜1615)には、既に喫煙が日本絵画の題材にされていましたので、早い時機に日本独自の喫煙風俗が形成されていたようです。

 「ぽっと出」のタバコ栽培により「本家本元」の米の作付面積が減少することを危惧した徳川幕府は、1605年を皮切りに、数回に渡りタバコに関する禁令を出します。

しかし、もはやタバコは当時のファッション・ブームとして一世を風靡し、加えてタバコ市場の屋台骨も揺るぎようがなく、徐々にタバコについての禁令は形骸化して行き、ほぼ元禄期を境に日本史から姿を消してしまいます。

 タバコに関する、主な日本史上の禁止令を辿ってみると、幕府の禁令トーンが、徐々に下がっていくのが良くわかります。

月琴1605年 タバコ喫煙行為の禁止(タバコは害多しとの理由)

1609年 狼藉をはたらく「かぶき者」の取締(彼らはトレードマークとして長いキセルを腰に下げていた)

1615年 タバコの栽培、売買、流通の禁止(完全否定・・・撲滅を目論む)

1642年 大飢饉を背景に、稲作・畑作用の田畑にタバコを栽培することを禁ずるが、新たに田畑を切り開くのはOK

1702年 稲作・畑作用の田畑にタバコを栽培する場合、翌年にはタバコの耕作面積を半分にすること

桔梗と白兎 禁止令を出すくらいですから、初期の頃は江戸城自体も時の将軍から全館「禁煙」を申し渡されていたそうです。

 ただし、管理職がいない間は、将軍の身辺警護役や女中衆などが、休憩室で半ば公然とタバコをくねらせていたようです。

 ですから、タバコ禁止令自体、当時の社会秩序維持のため不可欠なものというより、どちらかというと君主のタバコに対する好き嫌いから出されたような気がします。

タバコと日本 貝原益軒と鎖国

 

また、著名な江戸時代初期の医師、貝原益軒は自書養生訓でこう申しております。

十五夜兎

「烟草(タバコ)は毒性あり。

烟をふくみて、眩い倒るる事あり。

・・・病をなす事あり。

又火災のうれいあり。

習えばくせになり、むさぼりて後には止めがたし。

いたつがはしく家僕を労す。

初めよりふくまざるにしかず。

」〜最初から近づかない方がいい〜なるほど御尤。

 ですが、江戸時代のタバコの主流はキセルによるキザミタバコであり、一回吸うたびに結構手間がかかるし、喫煙回数も一日数回の「一寸一服」タイムに集中していたようなので、自分の健康と楽しみを秤にかけてまで「タバコをやめよう」と思った日本人は、そんなにいなかったでしょう。

 このような喫煙環境ですと、現代のようなチェーンスモークは考えにくいので、タバコの煙害も余り取り沙汰されなかったのではないでしょうか・・・。

 むしろ、気分転換・日常生活の区切りに、タバコは好都合だと思う人のほうが、大多数を占めていたようです。

 ともあれ、こうしてタバコは嗜好品として江戸庶民を中心に広く親しまれながら、日本に固有の文化をもたらすことになります。

 また、愛煙家の喫煙需要を背景に、タバコの耕作栽培は産業として発達し、日本各地でタバコ産地の形成が進んでいきました。

紫陽花と雨蛙 日本が開国を余儀なくされた節目として、1853年のペリー浦賀来航が日本史で引用されますが、この黒船来航を契機に、それまでキザミタバコしか知らなかった日本にも、外国タバコが入ってきます。

 最初は、葉巻タバコが流行ったそうですが、そのうち現在の紙巻タバコが主流になりました。

 こうして、日本でのタバコの主流がキザミタバコから紙巻タバコになったことから、タバコを取り巻く様々な問題が生じてきたように思えます。

 以上、導入時の頃のタバコと日本史との関わりを断片的に辿りました。

 お上が、タバコを作るな吸うなと禁止していた にも拘わらず、タバコがアッという間に、庶民の 間に根付いてしまった事実は、大変興味深いと思いませんか。

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