タバコ依存症

タバコ依存症に対する手立てとして、遅ればせながら日本においても、2006年4月から、禁煙治療に対し保険が適用されることになりました。
世論に「タバコは依存症」との見解が不足していたため、従来、禁煙したくてもなかなかできないタバコ喫煙者は、禁煙できないのは意志が弱いから、との評価を甘受せざるを得なかったように思われます。
しかし、ここに来て国が保険の適用を認めたということは、とりもなおさず、タバコを絶てないのは依存症という病気であると認めた、と解釈して差し支えないでしょう。
つまり、禁煙することは、医師の助けが必要なほど困難を伴うことだ、と国からお墨付きが出たことになります。
禁煙しても三日坊主で、またすぐタバコを吸ってしまったとはよく耳にする話です。
タバコ喫煙者の7割弱が禁煙を試みますが、禁煙の成功率はその内の1割程度といわれています。

タバコが身体に良くないことは、十分知っているのにタバコがやめられない・・・・禁煙できない苛立ちに、ストレスを抱え込んでいるのが、多くの喫煙者の現状ではないでしょうか。
では、なぜ禁煙できないのでしょうか。
それは第一に、喫煙行為はニコチンに対する依存症であり、薬物依存症の一つであるからです。
ニコチンが切れると、身体がニコチンをほしがっていらいらしたり、朝起きてすぐタバコが吸いたくなるのがその証拠です。
所詮、タバコもヘロイン、大麻などと同系列の麻薬であり、何が違うかといえば、精神に与える障害の程度と、それが取り締まりの対象になるかならないかの差だけです。
繰り返します、タバコは麻薬です、タバコ依存症は麻薬依存症という事です、健康に悪いと知りつつも、タバコが麻薬であるからやめれないのです。
この喫煙行為の薬物依存症的側面を、タバコの身体的依存と呼んでいます。
私は、自分がタバコ依存症であることを、自分自身に素直に認めざるを得ませんでした。
私に言われるまでもなく、タバコをやめたいと真剣に考えていらっしゃる方であれば、ご自分がタバコ依存症であることに気付いているはずです。
依存症という事実から目を背けず、煙害を真剣に考え、自分に禁煙宣言をすることは尊いことです。

禁煙の意志を固められた方の、禁煙成就を心から祈念いたします。
さて、禁煙できない第二の理由は、長年にわたる喫煙行為が、食事・睡眠などの生活習慣と共に、日々のルーチンとして脳に刷り込まれているからです。
これは、タバコの精神的依存と呼ばれています。
私は、身体的依存(ニコチン依存症)よりこっちの方が厄介だと思っています。
朝の目覚めの一服、食後の一服、お茶しながら一服・・・タバコに火を付ける生活のシーンは、数え挙げたら切りがありません。
そのうち、これらの区切りも取り払われて、適当な理由をつけては、タバコに火をつける機会を増やしていくようになります。
挙句の果てには、脳はニコチンだらけ、肺は毒煙で満たされ、体中に一酸化炭素が行き渡って、身体が悲鳴をあげているにも拘らず、気づいたら次のタバコに火がついていた、というチェーンスモーク症候群に陥ることになります。
タバコを吸うことを禁じられていても、身体的には既に十分大人である高校生が、大人が吸っているタバコを見て好奇心から吸ってみたり、テレビ・映画で自分の憧れの俳優が、タバコを吸っている姿を見て、真似して吸ってみたりと、タバコを吸い始めるきっかけは様々あると思います。
しかし、吸い始めから、タバコはうまいものだ、と感じる人は殆どいないはずです。

最初は、タバコの煙にゲッホンゲッホン咽ながら、「タバコなんて何が良くて口にしているんだろう」と思う人がほとんどでしょう。
しかし、吸った瞬間の、あのクラクラッとくる快感の虜になってしまって、何度か繰り返しタバコを吸っているうちに、肺や喉にもニコチン菌に対する免疫ができて、そのうち咽ることもなります。
タバコの吸い方が板についてくると、タバコのない毎日は味気ないものに思えてきて、もうタバコが離せなくなります。
このように、ほんのちょっとしたきっかけで始まった、タバコの火遊びが、時間の経過とともに、生活のシーンに頻繁に出現する息抜きや、イライラ解消の手段に利用されるようになり、タバコはじわりじわりと生活習慣に根をおろしていきます。
タバコをやめたいと思っても、ニコチンから離脱する前に、タバコの禁断症状である心理的、生理的症状に耐えかねて、もっとも手軽な方法で、且つこれまでの喫煙習慣で身に染み付いてしまった方法、つまり「タバコを吸う選択」を取ってしまいがちです。
これがタバコの精神的依存の厄介なところです。

これによって、禁断症状は解消されますが、元の木阿弥、それどころか殆んどの場合は、それまで禁煙した分を一気に埋め合わせでもするかの如く、立て続けにタバコを何本も吸ってしまいます。
おまけに、禁煙に対する自信を喪失し、禁煙再挑戦への意欲もそがれてしまいます。
したがって、禁煙に成功し、最終的にタバコなしの生活を享受するためには、まずタバコの禁断症状を克服して、ニコチンからの離脱を完全なものにしなければなりません。
ここまで来れば、禁煙は8割程度達成できたも同然です。
但し、残りの2割はもっと厄介かもしれません。