一日20本タバコを吸う理由

タバコ喫煙者の一日の喫煙本数は平均して20〜25本程度という統計があります。
なぜこの本数なのでしょうか。
タバコを一口吸い込む度に肺を経由して脳へとニコチンが伝達されますが、その速さは血管注射によるヘロインより速いと言われています。
タバコに含まれるこのニコチンは、無色の油性物質でかなりの依存性を有し、依存にいたるまでの速さは他のいかなる薬物よりも速く、タバコ一本でも十分に中毒に陥るほど強い化学物質です。
また、ニコチンは吸収されるのも早いのですが、なくなるスピードも速く、血中のニコチン量は喫煙30分後には半分になってしまうので、ほとんどの方は大体1時間に1本のペースでたばこを吸うことになるようです。
仮に睡眠を8時間とした場合、私たちが起きている時間は16時間ということになりますから、ほとんどの喫煙者が一日20本程度タバコを吸うという理屈もつじつまが合ってきますね。
このように、タバコを吸っても体内のニコチンがすぐに減少してしまうので、禁断症状を引き起こしてしまい、なかなかタバコがやめられないという方はたくさんいらっしゃると思います。
でも、ほんとうにそうでしょうか。
タバコの禁断症状イコール堪えられない肉体的苦痛と考えているのであればそれは間違いだと思います。
経験上、実際の禁断症状は肉体的なものではなく、本質的には精神的なものです。
確かに、頭が重い感じがする、脱力感があるなど身体的な不具合を感じることも事実ですが、これらはすべて精神的な理由に端を発しているような気がします。
つまり、根源的には、タバコという「拠り所」「楽しみの源」を失ってしまうという喪失感からくるものではないでしょうか。
アルコール中毒ならば酒を飲みすぎて意識を失うということもありますが、タバコを吸いすぎて救急車のお世話になった話は聞いたことがありません。
ですから、自分がニコチン中毒だということに気がつかないまま生涯を全うする方もたくさんいると思います。
しかしながら、「ニコチン中毒」はまちがいなく薬物中毒です。
上記のとおり、ニコチンの禁断症状はこれといった肉体的苦痛を伴いません。
理由もなくそわそわと落ち着かず、何かしら掛替えのないものを失ったような焦燥感と喪失感がつきまとうだけです。
しかしながら、このような禁断症状が長時間続くと、喫煙常習者は緊張の極みに駆り立てられ、なんにつけ自信がもてなくなり、焦燥感が一段と増してきます。
何に対して飢えているのでしょうか、そうです、知らず知らずのうちにニコチンという毒物がほしくてたまらなくなっているのです。
そして、またタバコに手を出してしまい「元の木阿弥」タバコはこのように他の薬物とは違い比較的短期間で人を再起不能に至らしめる「薬物らしい薬物」ではなく、長い歳月をかけてじわりじわりと確実に人を死に至らしめる「もっとも手ごわい狡猾な薬物」にちがいありません。