タバコとおコゲ

一日に何本もタバコを吸うヘビースモーカーでも、魚や肉を焼いたときのおコゲは「発がん物質が含まれているそうだから口にしては身体に悪い」とはじいて食事をします。
タバコにもこのおコゲに勝るとも劣らない発がん物質がしこたま含まれているのに、なぜおコゲははじいてしまうんでしょうか?長年にわたって染み付いた習慣とは恐ろしいもので、身体に悪いと思いつつもタバコにさよならできない、でもニコチンが含まれていないので、彼にとっては魅力のないおコゲなどの有毒物は、当然の如く毛嫌いをして口にしません。
人をして、第三者からの失笑を買ってしまうような不条理極まりない行動に駆り立てるこの呪縛は、タバコが麻薬であることを如実に証明しています。
頭はノーと言っているのに、あたかもニコチンに操られる操り人形の如く、手がタバコケースからタバコを取り出し、ライターで火をつける行為を日に何回も繰り返します。
二日酔いの日も、風邪で咳き込んでいるときでもタバコの煙を吸い込むことなしでは一日が終わりません。
魚や肉の焼きコゲに含まれるヘテロサイクリックアミン類やアスパラギンと炭水化物を多く含む穀物類などを高温で加熱調理した場合に発生するアクリルアミドは、発がん物質として話題になっていますが、タバコの煙にも、身近なところでは、自動車の排ガスに含まれるベンツピレン、カドニューム、はたまた宇宙ロケットや飛行機の燃料に含まれるヒドラジンなどの発がん物質が含まれていて、タバコの煙を吸うたび徐々に身体の中に蓄積されていきます。
喫煙者は肺がんになりやすいといわれますが、がんの素を吸い込んでいるんですから、至極当然のことですよね。
でも、悲しいことに、ほとんどの方は、病がかなり進行してからでなければ、「やめておけばよかった」と悔いることはありません。
また、未だ「タバコのせいで死んだのだ」の言い切れる根拠にも乏しく、それほどタバコは狡猾で証拠を残さない凄腕のプロの殺し屋なのでしょう。
たとえ、タバコのせいでなくなっても、医師の死亡診断書は「肺がん」とか「脳卒中」などでしょうから。
私は家内に入れ知恵をされた息子に「お父さん、身体に毒を入れても平気なのであれば、どうせなら魚のおこげもいっしょに食べたらお母さんの仕事が減るんじゃないの?」と言われたことがあります。
図星を指され、「子供のクセに何がわかるんだ」と子供に息巻いた記憶があります、でも、今にして思えば息巻いた相手は子供ではなく、禁煙したくてもできない情けない自分に対してでした。
特に、お若い貴方、今からでも遅くはありません、老婆心ながら、わざわざ自分をやつれ憔悴させるタバコとは早めにオサラバした方が賢明ですよ。